Dr.よねやまの芸脳生活 芸術家の生き様を医学で考える
米山公啓
Dr.よねやまの芸脳生活
芸術家の生き様を医学で考える
米山公啓
第四回 夏目漱石と胃病 ①
倫敦塔にて
エッセイの舞台となった「ロンドン塔」。今では世界遺産となり、多くの人が訪れている 画/米山公啓
文豪の定義は曖昧である。少なくとも戦後の作家を文豪と言うことはあまりない。一般的には明治、大正、昭和初期くらいまでの、有名作家を文豪と呼んでいる。
私は医学部の助教授時代、入学試験の面接官も何度か、やらされていた。
そこでのお決まりの質問に「どんな本を読んでいますか」というものがあり、私はその聞き役だった。
ある受験生が「最近読んだのは『吾輩は猫である』です」と言った。一瞬、私を含む3名の面接官はシーンとなり、引いてしまった。
その雰囲気は、その受験生には全く理解できなかったであろう。まあ、中学生ならまだしも、医学部入試の面接で、『猫』はないだろうと、みんな思ったに違いない。堀田善衛の「『インドで考えたこと』です」などと言ってほしかったのかもしれない。いずれにしても、愛読書が『猫』という答えを、平然と言うことに驚いてしまった。
もう少し格好つけて、難しい本の名をあげるものだろうに、
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