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愛のレシピ:23歳

下平咲

愛のレシピ・・23

下平咲

ペロペロキャンディに憧れて

私は寝れない子だった。

正確にいうと、母が寝るまでは自分も安心して眠ることができない子、だった。
東京に暮らしている時、母は精神科病院から貰った睡眠薬を飲んでいたので、薬を飲むとすぐにパタっと寝てしまうことが多かった。
母は睡眠薬の量や飲むタイミングを守らずに、いつも好き勝手に飲んでいた。水でなく、アルコールで睡眠薬を流し込んでいることもよくあった。そのため、お風呂の中で寝てしまったり、キッチンで鍋を火にかけたまま、その場で倒れて寝ていることも日常茶飯事だった。

母がいつ、家の中のどこで倒れるのか予測ができないため、母がベッドに入るまで、私は不安で不安でしょうがなかった。

どさん、と大きく鈍い音がする。

私の耳はすぐにその音を聞きつけ、音のした方へと向かう。
そこには床で寝転ぶ母の姿があり、何度も呼びかけたり頬を叩くなりして母の意識を戻す。
もうろうとした母の体を支えながらベッドまで彼女を運ぶ。
摂食障害で痩せこけていたとはいえ、小学3年生の私には足元が覚束ない彼女を運ぶのはなかなか大変だった。
母をベッドに寝かし、さっきまで母が使用していたキッチンやお風呂の掃除を済ますまでが、私の夜の役目だった。

この一連の作業が終わると、私にも静かな夜がやってくる。

とは言うものの、すぐに寝付けるはずもなく、
民放のテレビを勝手に観ることを禁止されていた私は、
毎晩『アルプスの少女ハイジ』のビデオを観ながら眠くなるのを待った。

私はハイジを観て育ったと言っても過言ではないくらい、本当に毎日観ていた。
セリフも、セリフを言うタイミングも完璧に覚えてしまっていた。

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