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『 スポーツは文芸をどのように彩ってきたか 』

玉木正之

スポーツは文芸をどのように彩ってきたか

玉木正之

第八回 アメリカ文学のなかでも特別な存在として異彩を放つ「野球小説」 フィリップ・ロスの『素晴らしいアメリカ野球 The Great American Novel』はその最高峰に鎮座する存在だ!

アメリカには「野球小説」と呼びうる伝統が存在する。バスケットボールやアメリカン・フットボール、ゴルフや競馬など、野球以外のスポーツをテーマにした小説もないわけではないだろうが、「野球小説」だけは特別の存在である。

たとえば……ジェームズ・サーバーの『消えたピンチ・ヒッター』(1941年)には身長が90センチ以下の小人の打者(バッター)が登場。監督は2死満塁のチャンスで代打に起用し、四球押し出しで決勝点を狙う。ところがスリーボールのあと投手がなんとかストライクを取ろうとして投げた超スローボールを、小人の打者がチョコンと打ち返したものだから、そこから抱腹絶倒の大騒動。

守備側の選手の誰もが、まさか打つはずがないと思っていたから、単なる投手(ピッチャー)ゴロを悪送球やエラーの連続……というところでネタバレは止めるが(興味のある方は文春文庫『12人の指名打者』をお読み下さい)、アメリカの野球小説は、選手が中心になる日本の「人間ドラマ」とは正反対。ベースボールそのもののダイナミックな面白さ、破天荒な素晴らしさ、奇妙奇天烈で驚きに満ちたボールゲームの魅力を描いたものが多い。

それは《ベーブ・ルースといえども、ベースボールより偉大ではない》

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