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『 俳句で味わう、日本の暮らし 』

黛まどか

俳句で味わう、日本の暮らし

黛まどか

第一回 彼岸

春分を中日とし、その前後七日間(二〇二〇年は三月十七日から二十三日)を「彼岸」と呼ぶ。俳句では「彼岸」と言えば春の彼岸をさし、秋のそれは「秋彼岸」とする。「暑さ寒さも彼岸まで」と言うように、その頃を境に寒さも緩み、過ごしやすい季節を迎える。

彼岸とは、サンスクリット語「波羅蜜多」を訳した「到彼岸」から出た言葉で、生死(しょうじ)の海を渡って到達する悟りの世界「涅槃」をさす。対して生死を繰り返し迷いにあるこの世は「此岸(しがん)」。

彼岸会(ひがんえ)」は仏教行事の一つだが、インドや中国にはなく、日本だけで行われているようだ。寺院では法要を営み、在家信者は寺院に詣で、墓参する。また各家庭では、牡丹餅や彼岸団子、花などを供えて先祖を供養する。

太陽が真東から昇り、真西に沈む春分に、極楽浄土を意識し、故人を偲ぶ。彼岸は、六波羅蜜の基本的な修行(布施、持戒、忍辱(にんにく)、精進、禅定、智慧)を実践する期間でもある。

日本では農事が始まる時季と重なるため、仏教行事とは別に、収穫を祈る祭祀も多い。彼岸の入りの日を「入り彼岸」「彼岸太郎」「さき彼岸」「初手彼岸」などと呼び、この日晴れると、その年は豊作になるとされてきた。地方によっては、山に登ったり神社に集ったりして籠る「彼岸籠り」があり、五穀豊穣を祈る風習の一つだ。

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