特集とりとめな記
特集編集班
特集とりとめな記
眠以子
ようやく、さまざまな雑誌やテレビ番組が「旅」を取り上げはじめた。秋の装いに彩られた各地の写真や映像があふれて旅情を誘われるなか、やはり不動の人気観光地として出かけてみたい気持ちを強く搔き立てられるのが「京都」である。
そんな京都、新型コロナウィルス感染症の影響で、令和3年の市内の外国人宿泊客数は令和元年と比べるとなんと98・6%のマイナスだったという(京都市発表)。
今年は3年ぶりに祇園祭も行われ、人出が戻っている様子。これから増えていく賑わいのニュースを楽しめる秋になればと願っている。
今回の特集では、京都出身の作家、綿矢りささん、柏井壽さん、黒川創さんに「とっておきの京都」について語っていただいた。
インタビューに応じてくださった綿矢さんは、コロナ禍で人が少なかった街を見て、人の賑わいこそが京都を支えていたのだと寂しさを伝えてくれた。そして、離れたからこそわかる京都の本質や、故郷を舞台にした作品に込めた思いも語ってくださった。
柏井さんは、祖父と京都を巡るうち、「美の脇役たち」の存在に気づき魅かれていったという。清水寺や金閣寺など、よく知られた名所の〝知られざる美〟についてのやさしい語りを読んでいると、目の前に鮮やかな光景がひろがってきて、すぐにでも行って確かめたくなる。
そして黒川さんは、上賀茂神社近くにある「高麗美術館」の創設者である鄭詔文さんとの秘話を明かしてくださった。朝鮮半島の文物を所蔵する美術館設立の経緯や、鄭さんと実際に出会ったエピソードには、故郷を離れていた鄭さんの願いと、いままた38年ぶりに故郷に戻った黒川さんの想いが交錯し、京都の奥深さを伝えている。
この特集を読んでくださった方が京都を旅したら、きっとこれまでとは違った魅力を発見してくださるだろう。
旅の栞は、作家たちの言葉。
どうぞ皆さま、豊かな旅で実りの秋を。
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