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『 鬼ものがたり 』

桑原茂夫

鬼ものがたり

桑原茂夫

第5話

児肝じかん」をもとめた男 編

絵 東學

わたしは、当代きっての武門に生まれた娘です。父は、朝敵とされた関東の猛将・平将門まさかどを討ち取って武名を高めた平貞盛さだもりさまの、一の家来で、揺るぐことのない信頼を得ていました。おかげで、ほかの誰にも話せないような、とんでもない話も、父はずいぶんと聞かされてきて、そのたびに驚くやら呆れるやら、それでもなんとか自分のハラにしまい込んでいたようなのですが、ときどき酒に酔って、わたしに話を聞かせてくれました。

なかには、かんたんに聞き流せるようなものではない、ひどい話もあって……どんな話でもまともに聞いてくださる方という噂を耳にして、こうしてやって参りました。

   ●

貞盛さまが将門討伐の功を立てて、丹波国のかみに任じられて間もない頃の話です。

太腿にあった腫物はれものがにわかに痛みを伴うようになり、強気で鳴る貞盛さまもひそかに都から、名医の名をほしいままにする医師を呼び寄せました。実は将門軍との戦で矢傷やきずを負ったものの、それを恥ずべきこととして、公にせず、隠し通してきたのです。

呼ばれた医師は、腫物をひと目見て険しい表情を浮かべ、あっちに触りこっちに触れてから厳かに告げたそうです。これは矢傷がこじれてできた腫物です。すぐにでも取り除かなければ、お命にもかかわります、と。貞盛さまはそう聞いてもあわてず騒がず、どうすれば治るのか、鋭く聞き返しました。

気圧けおされた医師は、迷うことなく、特効薬として「児肝」なるものを勧めました。児肝というのは、胎児、それも男児の肝臓のことだそうです。そう簡単に入手できるとは思えませんが、医師を滞在先に帰してからすぐ、ご子息の維衡これひらさまを呼び、

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